2011年のお正月に家族で京都に旅行に行きました。
場所は蹴上にあるウェスティン都ホテル京都。
一昔前、京都の都ホテルと言えば食事をするだけでもステータスと言われていた老舗のホテルです。
ホテルはお正月休みと言うこともあり、海外の方も多くとても賑わってました。
初詣の寺社仏閣をリストアップしていましたが、ガイドブックのみが頼りの自分達にはそのどれもが有名な場所ばかりでした。
なので、ホテルマンなら情報を知ってるかもと思い、フロント横のデスクで仕事をしていた背の高い男性スタッフに話し掛けました。
荷物の発送の事でとの理由で質問をし、そのスタッフの気さくながらも礼儀正しい人柄もあり、京都の事も含め色々お話をしてみると、
そのスタッフは東京での生活が長く、しかし京都が大好きで年に何度も一人旅で京都に滞在し、しまいには京都が大好き過ぎて1年前に引越してきたそうです。
この方ならと思い、ホテルマンの力量を見るではありませんが、ちょっとぼやいてみました。
「京都には沢山有名な場所があるけどどこも観光客が多くて、正直疲れたんだよねー。初詣も考えてはいたけどさー。部屋でゆっくりしようかな」と。
そしたらそのスタッフが離れた別のテーブルに自分達を案内し、ちょっとお掛け下さいと勧められました。
そして「話が長くなりますがお時間は大丈夫ですか?」と。
ガイドブックには載っていない・知ってる人もほとんどいない・ホテルから徒歩で行ける・御利益もある、そんな場所を知っていると。
大のお気に入りらしく、誰にも教えた事もなく、これもご縁なのでこっそり教えますと。
これからもガイドブックなどには載らないと思いますので、絶対に口外はしないでくださいね、との念も押されました。
その神社は、見た目が本当にボロボロで、柱や建物は蜘蛛の巣だらけで、舗装されていない狭い山道を登ったところにひっそりとありました。
しかしその神社の形状・見た目は伊勢神宮の正宮と瓜二つで、作り方も同じ工法。
徒歩がメインで交通がまだ発達してない時代に、伊勢神宮に参拝出来ない京都の方々の為に作られた神社で、実は京都にある寺社仏閣の中で1番のパワースポットでもある神社だそうです。
そのスタッフの方が東京から何度も何度も京都に来ては、毎回同じ素泊まりの民宿にお世話になっていた時に、その小さな民宿を経営されていた老夫婦から教えてもらった情報だそうです。
その老夫婦曰く、世間的に京都人は観光客に慣れてる分社交的なイメージを持たれているみたいですが、実は京都人というプライドもありかなり内向的で、ただ観光客に対して抵抗が無いだけで、それはただの慣れでしかないらしく、
それを周りが勘違いしていると老夫婦がおっしゃっていたようです。
道を尋ねても気さくに教えてくれるのは、同じ質問を毎日何回も聞かれているだけだと。
その中に飛び込めて認められた人にしか本当の胸の内は明かさないのが京都人だそうです。
お茶漬けを出されたらそろそろ帰って欲しいなど、直接的ではなく間接的に気持ちを伝えるのも京都人だと。それを京都弁で「いけず」と言うそうです。
そのスタッフの方は何度も京都に行き、毎回同じ民宿にお世話になり、長い長い時間を掛けて京都人の輪の中に入れたらしく、飛び込むと家族のようにすごく大事にしてくれるのも京都人の良い所で、そんな老夫婦が教えてくれた貴重な情報でした。
誰にも口外せずに1人でその神社を楽しんでいたスタッフの男性、
ホテルマンの力量を量ってみようとある意味カマをかけてしまっていた自分達、
それも全て見透かして本当に知りたいだろう情報を掴んでいたスタッフの人間観察力に大きな驚きを抱きました。
話し方や目線、仕草や声の抑揚の感じで、本当に知りたい事はすぐに分かっていたそうです。なので、他の人に聞こえない場所で、時間を掛けて教えてくれたそうです。
色々なケースを色々なゲストから色々な角度から沢山経験すると、本当に言いたいこと・知りたい事はすぐに分かるそうです。
そのスタッフの方がおっしゃってました。
「欲しいモノを3つ挙げてとの質問の場合、3番目に挙げるモノが実は1番欲しいモノなんですよ」って。心理学らしいです。
ホテルマンは、フロント業務や荷物を運んだり、客室の清掃など、そういったサービス業の仕事だと思っていましたが、優れたホテルマンはゲストの内面を瞬時に読み取る力があり、それをさりげなくスムーズに行動出来るんですね。
おもてなしやホスピタリティと言う言葉がありますが、そういった括りにしてしまうのさえ失礼なのではないかとも思いました。
ホテルマンから最後は心理学を教えてもらえるとは誰も想像はしませんよね。
笑顔で気持ちの良いサービス、そういったのを求めているのが普通だとも思いますが、
他のスタッフとは知識や経験など明らかな違いのあるスタッフを通じて、沢山の事を教わったお正月になりました。