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    第60回京都100年企業研究会 訪問レポート 2019年11月23日

    『変わらないために変わり続ける』

    株式会社 松栄堂 専務取締役 畑元章様

    【松栄堂の紹介】

    創業300余年企業、口伝のため正式な記録はない。

    現在の社長は12代目

    【聞香体験】

    お香の歴史・成り立ち

    仏の教えを聞く=『聞法』

    聞香=香木そのものと向き合い、香りを繊細に鑑賞する。

    『沈香』=様々な外的要因によって木質部分に樹脂が凝結し、樹木自体が枯れていく過程で熟成されてできたもの。薫香料のほか、薬用としても古くから知られる。

    昔より、沈香は海外から輸入していた。同じ品質、希望の量を求めるのは今でも難しい。

    →その中で

    宗教的、権力的に高い地位の方を中心に使用されたと考えられる。

    日本で「香」が用いられるようになったのは仏教伝来の頃と考えられています。平安時代には、香料を複雑に配合したものを小さな塊にして炭の近くに置いて温めたることで香りを出したり、お焼香のようにして使用した。着物や手紙、和歌に香りをつけることで、香りは自分のアイデンティティを示し、コミュニケーションのツールとなっていたと考えられる。

    貴族社会が中心の世の中から、武家社会へと力が移っていった。歴史的、宗教的背景の理解が薄いまま、様々なものが権力のために使用される一面もあった。その中で香木は、燃やしてしまうと二度と出会えない、どうすればこの希少性を共有できるかが考えられ、今日の聞香の原点が作られていったと考えられる。

    香木の香りを判じるだけでなく、和歌や教養を散りばめた『組香』が楽しまれるようになる。

    よく知られているもので源氏香がある。

    源氏香=香りの判じかたによって線を引く→52通り

    源氏物語は54帖、そのうちの52帖分に源氏香の図が当てはめられる。

    “五味六国”

    当時考えられた六つの産地に、五つの味によって香木は分類・表現された。

    五味=酸(すっぱい)・苦(にがい)・甘(あまい)・辛(からい)・鹹(塩辛い)

    六国=伽羅・羅国・真南蛮・真那伽・佐曽羅・寸門陀羅

    【専務講演】

    1.家訓:“お線香のように細く長く曲がることなく、いつもくすくす燻って、あまねく広く世の中へ”

    一瞬の輝きだけで終わるのではなく、ずっと続くようなしかたを、人からどうなのだと問われるのではなく、まっすぐに仕事をしなさい、という意味だと解釈しています。

    松栄堂の活動テーマ

    『香りある豊かな暮らしを皆様へ』=香があるから豊かではなく、色んな香りに出会えることが豊かであると考え、その中の一つを提案し続けています。ふとした瞬間に思い出してもらえるような香りを作っていきたい。

    2.製造に関して

    毎年様々な香りを開発中。コンセプトとしては、“ふわっとやさしく香る、気付くと忘れる香り”

    お線香は原料となる様々な漢薬香料を粉末にし、水を加えて練り上げ、成形・乾燥させる。

    (沈香・白檀・桂皮・丁子・乳香などの原料を使用。日本でとれる原料がほとんどなかったが最近では地域で取れる特産品の香りも模索中。多くの原料は東南アジアより輸入)

    3.松栄堂の沿革・経営戦略

    • 戦後営業で変わった

    戦前は雑貨屋さんで販売されていたお線香類。戦後、全国にある仏壇仏具店に電話をする営業をかけたことで、町で販売するお線香屋さんから、全国へお届けするお線香屋さんへ。

    • 出会いを変えた平成の30年

    お客さんとの出会いを変えよう。直営店の強化

    東京人形町、銀座などに続き、清水寺産寧坂、大阪本町、京都駅、嵐山に直営店を構えた。

    お線香=宗教的なものだけという意識を変えるために、商品開発。

    全国の旅館で使っていただけることで人気を得た商品もある。

    リスン(lisn)−平成元年に設立したブランド。知名度は年々微増。常にファンを作り続ける新たなブランディング〔バーカウンターのようにお客様の好みに合わせて1本ずつインセンスを買っていただくことができる〕

    薫々−京都駅にオープンした直営店。まず香りに出会ってもらえるような商品の開発を行い、小さいパッケージのワンコインで買うことができる商品を販売。

    嵐山香郷−嵐山の昇龍苑にオープンした直営店。半分は体験スペースとなっており、コンセプトは「旅の思い出を香りにしてお持ち帰り」。

    新たな分野=おそ松さん等アニメ、ゲームとのコラボレーション。500円でポストカード1枚サービス。普段出会う機会が少ない若年層のお客様と出会う機会を作ることができた。

    一緒に成長できるコラボをしていきたい。

    文化活動の一貫として、製造現場の見学や体験教室、講演活動を行なっている。修学旅行や教育機関の授業としてもご活用いただいている。

    • 出会いをもっと変える

    2018年は松栄堂の大転換期=薫習館を設立

    学生や作家様と企画展を行うこともある。

    • お客様との出会い創出のために、社内の出会いを変える

    施策⑴オフィスのリニューアル

    →パーテーションを外し、社内コミュニケーションの円滑化

    食堂もきれいに広々したスペースにリニューアル今まで食堂をつかわなかった人が使用するようになった。また、席順が固定しないように席をくじ引きで決める日をもうけ、社員同士のコミュニケーションの円滑化を図った。夜に社員勉強会、大画面TVをつかって社員でスポーツ観戦など、様々な形で活用している。

    施策⑵コミュニケーションボードの設置、思いの見える化

    引き出しがないからロッカーにいれなきゃいけない、ゴミ箱がない等リニューアルに伴い不安のある社員もいたため、新しいオフィスを全員で運営できる仕組みを考案した。

    施策⑶社内の書類を整理

    アーカイブは財産である。

    施策⑷清掃活動の実施

    違う世代の人とコミュニケーションを図る時間。

    4.普段心がけていること

    ①時間厳守

    ②整理整頓

    ③失意泰然得意冷然。テンションではなく、モチベーションで仕事する

    ④視野広く、心細やかに(お客様をみる)

    ⑤変わらないために変わり続ける(時代にあわせて自分がかわる)

    ⑥一度で伝わるのは5%(何度もみせる、言う)

    ⑦一日15分勉強する(3年で自分の成長に気づく)

    ➇公共機関で移動する(世の中をみる)

    ⑨経営論ではなく、チーム論

    全社員は登山のチーム。どこまであるかわからない山頂を目指す

    社長のワンマンで動く世の中ではない=社長もひとつの機能である

    全社員が機能として、高みに上っていく

    機能は上下ではなく、横並びである

    ⑩三点確保の経営=三点がしっかりしないと次の一手が出せない。

    ⅰ.薫香類の製造・販売

    ⅱ.文化事業の継続・発展

    ⅲ.全社員の安心・強化

     

    5.質疑応答

    ①ほしくて買う人・ブランドでとりあえず買ってプレゼントする人の比率は?

    定量的な調査が難しい。産寧坂店、京都駅薫々では初めて出会うお客さまも多いが、本店はリピーターの方が多くを占めるかと思います。薫習館ができたことで、今までに出会えなかったお客さまとも出会うことができている。宗教的なもの6割・それ以外4割の比率で売れている。

    業界のセグメンテーションとしては、日常品と非日常品の狭間にいる状態

    (例:伝統産業と呼ばれるものの多くは非日常品に分類されており近年は経営難。お線香がいかに日常品になれるかを検討中)

     

    ②今後どんな商品開発・ターゲットを考えている?

    既存のマーケットはシュリンクしているが、どうレベルを高めるか、新しいお客さまと出会っていくかが課題の1つ。新規の商品開発に関しては、日用品・実用的なものをお客さまの声をもとに商品開発をしている。

     

    ③商品開発の決定権は社長?

    →社内で社員含め検討、社長が意思決定

     

    ④経営者の前に、一香りをあつかう人として普段学習している・意識していることは?

    継続して勉強することが大切。1日15分でかまわない。3年継続すると、変わったことに自分自身が気づく。香りのこと、スパイスのこと、香道のことを横断的に勉強している。香りに興味を持つことも大切。日常には色々な香りがあるので、帰ったらクローゼットの香りをかいでみてはどうでしょう。

     

    ⑤もともと継ぐ意思があったのですか。

    大学在籍時に、老社員より「社長(父)と同じことをする必要はない」と言われたことをきっかけに「違うこととは……」「皆んなに認めてもらえるのか」と空回りしてしまった。結果大学に7年も行き、卒業して松栄堂に入社。働くうちに「社長がどれだけ高い山を登って、どんな景色を見てきたのか真似しないとわからない」と思ったことが、大きな転換期だったと思います。今はしっかりと継いで、確実に次の世代へと渡していきたい。

     

    ⑥30歳になって、継げるだろうと自信がついたってことですか?

    自信がついたとは言えないけど、バトンを受ける覚悟はできています。今は受け取るためのバトンゾーンにいます。だからといって今の自分のままでいいとは思いません。勤勉でないと受け止められないと思います。

     

    ⑦では自然と継ぐ流れだったのですか?

    色々とありましたが今は前向きに考えられるようになりました。これは父と私の二人の関係だけでなく、家族、従業員からの協力や教育があったからだと感じています。

     

    会員様集合写真 in 松栄堂

    2019.11.23 松栄堂訪問
    集合写真

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    この記事を書いた人
    京都100年企業
    林 勇作

    1965年8月28日生まれ
    大阪市出身

    今後の日本の中小企業の手本となる魅力ある強い企業体の創出に最大限の力を注ぎます。会員様と共に永続的な成長と発展を図り、会員様と共に幸せな人生を実現します。

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