今から7年前の2010年の夏、成人式の振袖を購入しに京都まで大叔母と足を運びました。
大叔母は子どもがなく、まるで私たち兄弟を孫のように可愛がってくれる人でした。大叔母の趣味が着物を見ること。私たちの振袖は京都の良いものを作りたいと何年も前から意気込んでいたそうです。
そこで地元の大叔母行きつけの呉服屋さんに紹介された京都の老舗の呉服店に行くことになったのです。その呉服店は老舗ではあるのですが、改装をしていて見た目はとてもきれいな建物でした。中を通されるとまず待合室。一見さんは基本お断りらしく、呉服屋の紹介などで予約をした方限定だそう。なのでまず待合室があるそうです。
待合室では名前や来店の旨を事前に聞いている担当の方が来てくださり、さっそく奥のお座敷へ通してくれました。お座敷にはぐるっと様々な彩の振袖が重ねてあったり、提げてあったりしました。私は鏡の前に案内され、どの色合いが良いか、絞りはどうするかなど聞かれましたが私にはさっぱり。近くに座った大叔母から「暖色が良い。赤や朱色」と指示があると、担当さんがすぐさま赤系統の振袖を数着持ってきてくれ、一着ずつ広げながら、色味や染料、刺繍の説明をしてくれました。
その説明は着物の事を詳しくない私にもとてもわかりやすく、そこから着物を選ぶのがとても楽しかったことを覚えています。その中でもあまり見かけない朱色の着物が目にとまり、大叔母も思い描いていた色合いだったそうで、鏡の前で羽織ってみました。
その着物は皇室も御用達の職人の手がけた着物らしく、気に入った朱色の色味もとても珍しいものとのことでした。鏡の前で試着しながら、その後はその着物に合わせた帯や帯締め、帯揚げなどを選んでいきました。帯も似ているようでとても細かい刺繍でよく見てみるとかなり違いがあり、柄にもさまざまな意味があるそうです。私が選らんだ着物には刺繍で御所車が大きく描かれており、紺色の地に絞りのあるものだったので、金の帯に大輪の菊の刺繍の入った帯を選びました。選び終わると、すぐに裾直しに入り、腕の長さなどを測ってもらいました。
その後は呉服店の知り合いだという近くのこれもまた老舗の料亭に連れていってもらいました。着物をせっかく京都で選んだので、京都の味覚も味わって欲しいとの心配りだそうで、さすがサービスも老舗ならではだなと思いました。
やはり老舗というだけあって、着物の刺繍などの知識も深く、大叔母曰くとても作りが見事だと言っていました。実際の成人式も着付けをしてくれた方や、前撮りをしてくれた方揃って「すごく立派な着物ですね。どこで作られたんですか?」と聞かれました。見る人にはわかると言われましたが、本当に素晴らしい作りなようで、とても嬉しかったです。
一日中着てもヨレもなく、作ってくださった大叔母にはとても感謝しています。最近では着物はレンタルできますし、良い着物も出回ってはいますが、老舗ならではの刺繍や柄への思いと、ベテランだからこその色合わせで一生の宝ものになったと思います。
その後も大学の卒業式で袴と合わせてきたり、結婚式に招待された際に来たりと大活躍しています。立派なだけあって何度着ても褪せることもありませんし、どこに行っても恥ずかしくないしなです。
現在私は26歳になり、出産を控えた主婦。いつか娘にも同じように着物を作ってあげたいなと思っています。最近では成人式の一回くらいしか着ないのでレンタルなどで済ます方も増えているそうですが、せっかくの成人式で、嫁入り道具にも出来、裾を直せば訪問着にもなる一生ものですのでぜひ様々な方に作ってもらいたいなと思っています。