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  • 京都のしきたりが良くわかった出来事
  • 京都のしきたりが良くわかった出来事

    2005年の出来事でした。私は東京のとあるCM制作会社に勤めており、プロデューサーをしておりますがその頃はまだプロダクションマネージャーという番組でいうとADみたいな業種をしておりました。

    京都のある染色する場でのロケ地を探そうと、大阪にあるロケコーディネート会社にロケ地のリサーチをお願いして何箇所か候補地が上がってきて、一度スタッフとそのロケ地を下見(ロケハン)をさせてもらいました。

    そこの一つのロケ地は、画的にもCMの構成上ふさわしく、またそこの女将さんが素敵な方で話し方といい、風情といいますか、東京の人間が思う「京の女」という感じで好感が持て、そのロケ地で決定させていただきました。
    2週間後の撮影に向けて、クライアント様の要望等を受けてコーディネーターやそこの染色場の女将さんとも電話でやり取りをしながら段取りを踏んでいきましたが、女将さんの話し方が良い印象を受けまして、将来の嫁には京都の女性が良いなぁとか勝手に思いにふけていた頃を思い出しております。

    その時、コーディネーターを通してそこの染色場にかかる料金の話をさせていただきました。
    染色工場の1レーンだけ1日お借りしその他のレーン(他3レーン)は稼働して、染色場の作業員も遠くからであまりはっきり映らなければ顔出しの了承をもらえる運びになり、金額が決定しました。

    撮影当日になりましたが、現場では思い通りには行かないのが当たり前なのですが、女将さんは嫌な顔せず笑顔で我々の無理難題にも対応していただきました。
    そのおかげで、撮影は無事終了することが出来ました。

    カメラ機材や照明機材等の撤収もスムーズに終えたところで、女将さんに感謝の意を述べ、ロケ地使用料を封筒に入れて女将さんにお渡しをしたところ、女将さんは「いや、いいですわ。」とお金を受け取りませんでした。
    私は「いえいえ、先日コーディネーターさんとの話で決めた額ではありますが、お納めください」と封筒を差し出したのですが、女将さんは受け取ろうとはせず、拒みましたので、私もさすがにこれほど拒むっていうことはコーディネーターさんの方からもう受け取っているのかと解釈をし、執拗に封筒を差し出すことはせずに2回拒んだ時点で一礼をしてそのロケ地を後にし、翌日も別場所でロケがあったために宿へ帰りました。

    その日の夕食にスタッフの皆さんと、京都の食事処で夕食と飲酒で明日の撮影に向けて英気を養いました。
    スタッフとの会話は楽しく、昔話に花が添える感じで盛り上がってしまい、ちょっとはしゃいでしまった感もありましたが、そこのお食事処の女将さんはニコニコ笑顔で頼んでもいない「鯛茶漬け」を人数分差し出していただいたので、ご馳走になり、スタッフも満足していただいた模様でした。

    翌日の撮影で、コーディネーターに「京都って素晴らしいですね」と話をしました。
    コーディネーターは「何でですの?」という問いが来たので、すかさず「昨日行った食事処で鯛茶漬けをサービスしてくれた」と話したところ、「それは、はよ帰れの合図ですわ」というよく訳の解らない返答が来たので、「そういうことなんですね?知らないで食べちゃいました、、、、」と答えました。

    そのまま撮影に臨み、無事終了して東京に帰ることが出来ました。
    後日、コーディネーターから電話がかかって来て「あんた、まずいことしてませんか?」と一方的に言われたので、「何の事ですか?」と答えました。
    そしたら「染色場のロケ地料の事ですわ」と言われたので、「あれ、コーディネーターさんが払ってくれたんじゃないんですか?」と返しました。
    「はっ?うちは払ってませんわ、あっ、もしかして女将さん拒みました?」とコーディネーターさんが言うので、
    私は「2回も拒んだので、コーディネーターさんが払ってくれたと思って、そのままロケ地料まだ持ってます」と言いました。

    そしたら「京都の人は3回断ってから受け取るんですわ、今、女将から連絡あってものすごく怒っているんですわ」とコーディネーターさんに言われました。
    結局その日にコーディネーターさんの方で料金を立て替えて支払っていただきましたが、京都というとこの出来事が昨日のように思い出されます。
    以後、京都のロケの際は必ず現地の人に京都人講座的なレクチャーを受けてから撮影に望むようにしています。
    3回断ってから受け取る、鯛茶漬けが来た場合はなど、意外と思ったしきたりでした。

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