私は高校生の頃から、古都・京都に憧れ、住んでみたかった――その風情をこの身で感じてみたかったのです。
そんなわけで、親に無理を言って、大学は京都の大学を受験。無事に合格し、晴れて京都市左京区(代表的なものとして下鴨神社、京都府立植物園などがあります)に下宿することができました。
2007年~2011年の4年間過ごす中で、たくさんのお寺や神社を巡りましたし、和菓子も太るほど堪能しました。
さて、数多くの場所に訪れた私ですが、一番印象に残っている場所があります。
それは、貴船の地にある「右源太」という料理旅館です。
京都と言えば「川床料理」。誰しも一度は耳にしたことがあると思いますが、こちらではリーズナブルなお値段でそれを楽しむことができます。苦学生のくせに、京都に住んだ以上、避けて通れない試練とばかりに、絶対に食べてやるー!と誓っていた身としては、1万円しないで川床料理を楽しめるというのは、大変ありがたかったです。
友人と二人で赴きましたが、周囲を見渡すと、高齢の方やサラリーマン風(打ち合わせか何かでしょうか?)の方、そしてファミリー。そんな人々ばかりで、学生らしき人は一人も見当たりませんでした。そんな中での私たちは、明らかに不相応と言いますか、とにかく浮いている気がしてなりませんでした。
席へ案内されたはいいけれど、せっかくの景色も目に入らず、キョロキョロソワソワと少し落ち着かない様子の私たち。そんな我々の様子に気がついたのか、お店の女性のスタッフ(以下、仲居さんと表記させて頂きます)が「お二人は初めてのご利用ですか?」と話しかけて下さいました。ドキマギと、「はい」と答えると、今度は「慣れていないと落ち着きませんよね。よろしければ、このお店の歴史や貴船に纏わるお話をさせて頂いても構いませんか?」と私たちに優しく笑いかけながら、言って下さいました。すぐに、私たちの緊張をほぐす為だと気づき、大変嬉しく思い、お言葉に甘えさせてもらいました。
仲居さんのお話はけっこうマイナーと言いますか、コアな話が多くて、初耳のことばかりなので、非常に興味深く、面白いものでした。話を聞くうちに私たちの緊張はすっかりほぐれ、仲居さんにも「素敵な笑顔が増えてきましたね」と指摘されてしまい、友人と顔を見合わせ、思わず笑い合ってしまいました。
その後は、運ばれてきた料理をとても美味しくいただくことができました。自然を感じながらいただく料理はまた格別で、本当に来て良かったと、心の底から思いました。
かの仲居さんの出来事は、時間にして5分~10分ほどの事だったとは思いますが、仕事で忙しいはずなのに、お客様への接客が丁寧で、こんなにも気配りをしていただけて驚きました。この仲居さんのおかげで、通常の何倍も美味しく料理をいただけたと今でも思っています。
そんなエピソードがあるので、私が京都で一番印象に残ったのはこちらのお店でした。他のお店では体験することの出来なかった、想い出深い場所です。
最後になりますが、「京都の人=冷たい、怖い」という印象を持っている人も多くいるかとは思います。ぶぶ漬けで追い返される、なんてよく聞く噂もありますし。しかし、京都をそのようなところだと思わないで欲しいのです。上述のエピソードのように、人のあたたかさを感じられる場面が、この4年間で何度もありました。ますます、京都が好きになりましたし、大学時代を京都で過ごせたことを誇りにも思います。
今度は、私以外のたくさんの人たちにも、京都の素敵なところを感じ、体験して、そして京都を好きになってほしいと思っています。良ければ、京都に遊びに行く際には、ぜひ、「右源太」に足を運んでみてくださいね。