2016年夏に私は焼肉屋の店長を勤めることになりました。それまで愛媛県のホテルで20年勤務していましたが、そのホテルが撤退するに当たり声を掛けていただいた社長のもとで働くことにしました。そしてその年の夏私は社長と会社常務と京都に視察に連れて行かれました。目的は京都で有名な老舗の焼肉屋の手法を学ぶということでした。まずはランチを食べに京都西木屋町の和食の店に行き座敷に案内されました。赴き深いその部屋からは京都中心を流れる雅な鴨川が臨め、各座敷からは外に出られるテラスがありました。席に着くよりまずはこのテラスに出て鴨川のささやかな流れを感じながら川を取り巻く柳のせせらぎが聞こえて来るようでした。そしてそこでの昼食は5000円の懐石料理でしたが前菜、お造り、お吸い物、焼き魚、炊き込みご飯、果物、お茶、といった流れで料理提供されました。ランチで順番に料理が出るというのはなかなか経験できることではないものですが、それでも常に仲居さんと触れ合うことができ、適度な料理説明と会話をしてくれて非常に美味しい食事をさらに楽しくすることができました。さすがは京都老舗の接客技術というものは素晴らしいものだと感じました。さりげなくお客さんとの会話に入ってくるというスタンスは接客の勉強になります。会社の経営についての話をしている際はいっさい口を開かずにサービスをして気さくな会話のときは何気ない口調で嫌味にならない心地よい距離間で対応してくれました。さすが京都の老舗だと感動しました。夜も鴨川沿いにある焼肉屋に行き社長が目指す焼肉屋の原点の店ということでした。中に入ってみてまず驚いたのが建物古さでありましたが、これは古びたという意味ではなく古風な感じで趣がありました。迷路のように通路が入り乱れ階段も狭く急ではありますが、それがまた古風なイメージを増幅させてくれました。玄関入ってしばらくいくとカウンターがあり2名席に一つ肉焼きのコンロがテーブルに埋められておりました。最初の階段の下にワインセラーがあり高級シャンパンがまず目に留まりました。そこに老舗の戦略が見えました。高級酒を目に見える位置に置きお客さんの目に付かせ高級酒を意識させました。そのあと私たちは4名テーブルに着きましたが、真ん中にコンロがあり、テーブルに埋め込まれているような形でした。中には炭が入っていましたが、ガスで火をつけて肉を焼くというスタイル。埋め込まれたコンロに下から煙を吸い込むというシステムでした。メニューを見ると丹波牛中心にオーダーを組み特に極上ロースは100gで1枚3500円という愛媛県から来た私たちにとってはかなり高いイメージでしたが、とろけるような食感が最高でした。さらにワインセラーのイメージが最初に焼きついているのでワインを飲みたくなりメニューを見ると2万3万もするシャンパンがズラッと並んでいましたが、高いイメージがあるので一つランクが下な1万円を選んでしまいました。この価格でも十分高いのですが、最初に高級なイメージがあるので1万円でも安く感じてしまいました。これも老舗の戦略なのかなと思い見事にはまった瞬間でした。従業員の応対も素晴らしかったです。若い女の子で、最初は緊張していましたがオーダーの際に料理のグラム数やどこの部位なのかを聞いて、3人で食べる量としてはどのくらい注文すればいいか聞いたところ丁寧に応えてくれました。徐々に笑顔も良くなり大変好印象で最後は素敵な女性になっていました。値段は3人で5万5千程度使いましたが、肉の質では愛媛県さも負けてはいないと思いますが、何と言ってもランチに行った老舗も焼肉屋も接客が素晴らしく、こんなに食事って楽しいものなのかと感動させてくれました。京都はやはり何度でも行きたい場所であると思います。